くだものには生活習慣病を予防するさまざまな栄養素が含まれています。
- 万病の元といわれる活性酸素を不活性化する抗酸化物質
- 発がん物質の発生を抑制するビタミンCなどの微量栄養素
- 血圧を上昇させるナトリウムの排泄を促進するカリウム
- コレステロールや脂質の吸収を阻害し、腸内を清掃する食物繊維
これらの栄養素は野菜にも多く含まれていますが、調理によって失われるものもあり、生で食べるくだものはこれらの栄養素がまるごと摂取できます。また、塩分や脂肪分がほとんど含まれていないため、糖質の摂取も健康的に行えます。
■くだものに含まれる栄養素
- ビタミンC
- ガンを予防し、ストレスを和らげます。熱に弱く調理することによって失われやすいため、そのまま食べられる果実で摂ると効果的です。
- ビタミンA
- 髪の健康を保つ、視力の低下を防ぐなど成長に関与します。β-カロテンは、体内でビタミンAに変換され、免疫力を高めます
- ビタミンE
- 抗酸化作用があり、老化予防やがん、高血圧、動脈硬化などの生活習慣病の予防に効果があります。
- ビタミンB群(B1、B2、B6、葉酸、イノシトール)
- エネルギーの供給や老廃物の代謝に関与しており、どれが欠けても疲れやすくなります。また、ビタミンB6、イノシトールは脂肪肝の予防等の効果があります。葉酸は成長・妊娠の維持に必要な成分です。
- 食物繊維
- ペクチンやセルロースなどが多く含まれています。コレステロールの上昇を抑え、腸内の有害物質の排泄や、善玉菌と呼ばれるビフィズス菌などを大腸内で増加させ、生活習慣病を予防する効果があります。
- カリウム
- ナトリウムの排泄を促して血圧を正常に保つ効果があります。カリウムは調理すると失われやすいので、そのまま食べられる果物から摂るのが効果的です。
- ポリフェノール類
- フラボノイド化合物(アントシアニン、フラボン類)は、発がん抑制効果やビタミンCの機能を高めて毛細血管を丈夫にし、出血を防いだり血圧を降下させる効果があります。カテキンは、くだものの味に深みを与えるなど食味を構成する成分で、殺菌作用による口臭の予防や抗酸化作用による動脈硬化予防やがん予防などの効果があります。
- 有機酸(りんご酸、クエン酸、酒石酸など)
- くだものの酸味が有機酸です。爽快で清涼感を与えてくれます。有機酸は鉄の吸収を高めるので、貧血の防止効果があります。なかでもクエン酸は疲労物質である乳酸の減少を促進します。
- 糖分
- 主にブドウ糖、果糖、ショ糖(砂糖)の3種類の糖分が含まれています。でんぷんやショ糖は、消化器官でブドウ糖、果糖に分解されたあと、体の各器官のエネルギーとして利用されます。したがってブドウ糖や果糖の多いくだものは素早くエネルギーにできるため、疲労回復などの効果が早く発揮されます。また、脳はブドウ糖しかエネルギー源にできません。このため、ブドウ糖が多く含まれているくだものは脳を効率的に働かせる効果もあります。
■くだものの健康パワー
※くだものごとの機能性
- りんご
- 「1日1個で医者いらず~多くの疾病予防に効果あり」
▼予防効果のある疾病・効能
ガン(肺、直腸、結腸)、心臓病、脳卒中、アレルギーなど - なし
- 「食物繊維とソルビトールで便秘解消」
▼予防効果のある疾病・効能
高脂血症、脳卒中、気管支炎、肺気腫、血糖値・血圧の低下、便秘解消など - ぶどう
- 「抗酸化作用の強いポリフェノールが豊富で、ガン予防に効果的」
▼予防効果のある疾病・効能
ガン(皮膚)、動脈硬化、心臓病などの循環器系疾患、活性酸素の除去など - さくらんぼ
- 「ソルビトールが豊富で便秘解消に効果的」
▼予防効果のある疾病・効能
便秘解消、虫歯菌の生育抑制、眼精疲労、睡眠サイクルの改善、痛風など - ブルーベリー
- 「アントシアニン、ビタミンEが豊富。眼精疲労、老化防止に効果的」
▼予防効果のある疾病・効能
視力の改善・眼精疲労の回復、老化防止、脳卒中などの循環器系疾患など - みかん
- 「手軽に美味しく食べられ、発ガン抑制効果にも注目」
▼予防効果のある疾病・効能
ガン(大腸、皮膚、肺)、糖尿病、心臓病、高血圧、痛風など
■くだものに対する誤解
くだものを食べると中性脂肪が増える?
果樹研究所では、りんごと中性脂肪の増減との関係を調べるため、ボランティアにりんごを1日1個半から2個、3週間毎日摂取してもらい、血液中の中性脂肪を測定しました。結果、14人中12人で中性脂肪の低下が確認されました。このことから「くだものを摂取すると中性脂肪は下がる」ことが明らかになりました。
くだものを食べると太る?
くだものに含まれている糖類、特にショ糖や果糖は、肥満や糖尿病の原因となるので、くだものは体に良くないといわれることがあります。しかし、FAO(国連食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)は、「ショ糖などの糖類の摂取は肥満を促進するという考えは誤りである」と結論づけています。甘いとカロリーが高いと思われがちですが、例えば菓子類と同じカロリーであっても脂肪分を含まないくだものの方が太らないのです。
残留農薬?
りんごの表面がべとべとしていたり、ぶどうの粒が白い粉に覆われていたりしていると、残留農薬ではないかと思われる場合がありますが、これは残留農薬ではなく果粉(ブルーム)といわれるもので、りんごやぶどう自身が作り出している「ロウ物質」(ワックス)です。この物質で果肉から水分が逃げるのを抑え鮮度を保持したり、病気などから実を守る働きがあるのです。
なお、農薬については、農薬安全使用基準と残留農薬基準が設定されており、生産者はこれを遵守し、安全で美味しいくだものの生産に努めています。
■1日これだけ食べましょう
果物のある食生活推進全国協議会で推進している「毎日くだもの200グラム運動」では、その指針の中で、1日当たりの果物の摂取目標量を「可食部で200g以上」と設定しています。
これは、平成12年に文部省・厚生省・農林水産省が決定した「食生活指針」や、平成17年に厚生労働省・農林水産省が決定した「食事バランスガイド」など、食生活に関する各種指針を基に定めています。
なお、これは摂取量の少ない人を念頭に置いた目標量であって、現在すでに200g以上食べている人に対して摂取量を制限するものでないことは、言うまでもありません。
200gのめやす
りんご1個、ぶどう1房、さくらんぼ40粒、西洋なし1個、プルーン(小玉)7個、みかん2個
くだものの機能性や食べ方などを紹介しているホームページ、
「毎日くだもの200g!くだもの便り」もご覧ください。
【参考】果物と健康に関する各種指針等(主なもの)
- 「食生活指針」平成12年3月 文部省・厚生省・農林水産省決定
- 「食事バランスガイド」平成12年3月 厚生労働省・農林水産省決定
- 「健康日本21」平成12年3月 厚生省決定
- 「がん予防の14か条」1997年 世界がん研究基金・米国がん研究財団報告
- 「ベジフルセブン」青果物健康推進委員会
- 「5 A DAY(ファイブ・ア・デイ)」ファイブ・ア・デイ協会